What is Cromos?
クロモスは19世紀末にヨーロッパで人々に愛され大流行した小さな趣味の印刷物です。好きな絵柄をコレクションをしたり、手紙に貼ったり、写真や自分が描いた絵などと一緒にアルバムに貼ったり、自分でコラージュしたものを額に入れて飾ったりして楽しみました。ヨーロッパには古くから銅版画などはありましたが、それらは白黒で、身の回りに色が溢れ出したのは、19世紀に石版画が発明され、写真が誕生し、それらを応用した印刷技術が開発されてからです。
精巧な石版画の技術を用い、時には10版以上ものクロームの版を重ね凹凸まで施して印刷されたカラフルなクロモスは、手軽に手に入り、それを用いて美しい額絵を創ることさえできたために、たちまち人々に熱狂的に受け入れられました。油絵のような色のある絵を所有したり家に飾ることができる人は限られていたからです。つまりクロモスは、人々が手にした最初の絵画表現アイテムであり、今日の大衆表現時代を切り開いた最初の可愛い立役者でした。

谷口江里也
Elia Taniguchi
主な略歴
詩人、ヴィジョンアーキテクト、表現史家。
有限会社エリアス・クリエイティヴ・スターシップ代表取締役社長。
ヨーロッパの文化と芸術表現に精通し、多くの著述先品を著すとともに、
『東京銀座資生堂ビル』『ラゾーナ川崎プラザ』などの建築空間創造や、
さまざまなヴィジョナリープロジェクトに参画する。
主な著書に『画集ギュスターヴ・ドレ』(講談社)、『クロモスの世界』(小学館)、『ドレの神曲』(宝島社)、『空間構想事始』(エスプレ社)、『イビサ島のネコ』、『天才たちのスペイン』、『旧約聖書の世界』、『ゴヤ版画集1~4』、『随想 奥の細道』、『リカルド・ボフィル 作品と思想』、『理念から未来像へ』、最新刊『異説ガルガンチュア物語』(以上未知谷)など著書多数。

